ニューヨークにあるネット新聞、ここが最近ピュリツァー賞を授賞したのが話題だ。

ネットメディアとして初めてのピュリツァー賞だったからたが、4月13日の朝日新聞(デジタル版)はこう報じている。


・ピュリツァー賞が12日発表されたが、独自の紙面を持たずにインターネットなどで記事を発表している非営利の報道機関「プロパブリカ」のシェリ・フィンク記者(30才代の女性記者)が、ネットメディアとして初めて授賞
・同賞は昨年から、独自に紙面を発行しない組織の記事も審査対象にしている
・受賞したのはハリケーン・カトリーナの災害医療現場の検証記事で、NYTM編集部と協力して書かれ、ネットと同誌で発表。災害で電力を失った混乱状態の病院で、医師が致死量を超えるモルヒネを患者に投与した様子などを描いた
・プロパブリカは、ウォールストリート・ジャーナルの元編集局長スティーブン・エンゲルバークを主筆に2007年10月に設立、資産家の寄付によって支えられ、現在、32人の記者が所属、09年には38のメディアに138本の記事を掲載してきた


昨日のTBSラジオで、評論家の山田五郎さんがこれを取り上げ、こういうネット新聞が評価されるのはアメリカの健全なところで、日本でも学ぶところだとコメントしていた。山田さんにとっては羨ましいことなのである。


プロパブリカ、ProPublica、のサイトはここ 、授賞記事もある。

こういうネット新聞は「NPOニュースルーム」と呼ばれている。


プロパブリカはカリフォルニアの個人金持ち(金融業で財をなした)の寄付、年10億円の寄付を3年間受ける、で創業した。1200人もの記者が応募し、ピュリツァー賞授賞者も7人いる。全米最大の調査報道チームといわれ、ニューヨークタイムズよりも大きく強力と評価されている。


市民への裏切り、権力乱用、弱者搾取の三つに焦点を当てた調査報道に特化し、これを競争力としてマスメディアに対抗している。こういう事業の設計も参考にすべきところである。


寄付金で事業をスタートし、かかる金はほとんど記者の人件費であるが、読者が増えるにつれて収益事業にする、例えばネット広告で収入をえたり、記事を既存の新聞や雑誌に売ったり、購読料に相当する額を個人寄付として受け入れるような事業モデルをつくるつもりなのだろうと思う。


あと3年もすると収益モデルができるのではないかと予想する。


NPOニュースルームは日本にはない。事業スタート時の金持ちの寄付がないからだが、この間のフォーチュン誌の10億ドル以上の資産家は、日本にも50人ぐらいるので、例えば任天堂、楽天、ソフトバンク、ユニクロ、グリーなどの創業者、不動産、パチンコ、サラ金などの創業者には似合わない、が30億円寄付しネット新聞をつくることはできる。


それに気がつかないだけ。


そうすれば社会の先端を切り開いた名誉を手にすることができるうえ、投資収益率の高い事業になるのにと思うのだが

ついこの間、マイクロソフトのビル・ゲイツが、東芝と組んで、温暖化対策を目的とする数千億円規模の次世代原発プロジェクトに着手することが報道された。


開発途上国向けの小型原発で、100年も燃料注入がいらないタイプである。東芝を選んだのは既に試作型を開発してるからである。


このことについて、ダイヤモンド・オンライン(3月30日号)で真壁昭夫さん(信州大学教授)が「世界不況後のリーダーは国から個人へ?大富豪マネーが社会投資に流れ込む是非」を書いている。サイトはここ


こんな内容である。
『彼ら(富豪)にとって、多額の私財を投入する価値のある潮流が顕在化していることがある』
『彼らは、そうした分野に「新しい可能性」があることを嗅ぎ取っているのだ』
『私財を投入している限り、仮に事業で損失が発生しても、それが公的機関や一般の人々に及ぶことはない。こういったトレンドは、社会全体にとって大きなメリットだ』
『私財を投入する限り、その事業が成功すれば、主な出資者の事業に対する影響が大きくなることが避けられない』
『今のように社会全体が変わりつつあるときだからこそ、彼らのように独断専行の迅速さや、果断な意思決定が求められるとも言える。社会が変わるときは、「新しいチャンスのとき」なのである』」
『民間企業の「リスク・テイク能力」が低下し、政府の債務残高は急速に拡大した。いくつかの国は、債務残高の大きさに潰されるかもしれない状況に追い込まれている。国といっても、もう「ない袖はふれない」状況になっている』
『新しい次の産業の芽を育てる必要は、むしろ高まっている。公的部門の機能低下と、新事業育成の要請を結びつける1つの選択肢が、成功者の私財投入による事業拡大のチャレンジと言える』
『そうした動きが盛んになればなるほど、政府のような公的部門の機能の必要性が低下する。それは、とても歓迎されるべき現象なのだが、一方で、大きなリスクも孕んでいる』
『問題は、個人と社会の利益を調整する仕組みや機能を確立することだ。1つの選択肢は、公的部門の規制によって、個人の利益が優先され過ぎることを監視することだろう。金融機関に対する規制の議論は、その1つの表れと考えられる』


真壁昭夫さんはDKBのシンクタンクにいた高名なエコノミストだった人で、大学では金融論を教えてるらしい。


ビル・ゲイツの社会事業への投資を高く評価してるのだが、ロンドン大学の大学院を出ているので民間が社会事業へ投資することの大切さをよく理解してるのだ。


こんなわけで、ゲイツと東芝の共同事業を論評できるだけの知識と感性があるのでこういう記事が書ける。


過去は国家や大企業がやっていた役割を、これからは大富豪がやるという視点は新鮮でなかなかよい。


こういう着想は日本に大富豪がいないので湧いてこないが、世界の新しいトレンドはそうなのである

前回、アメリカでは大学が新聞社に代わり調査報道の事業を始めた話を取り上げたが、マスコミが事業縮小するのは日本でも起こることで、代わって誰がそれを引き継ぐのかが、まだはっきりしない。


日本の大学には、カネがない、社会の先端を切り開く文化がないので、アメリカのようにはいかない、アメリカで始まったモデルが使えない、そうなると誰がやるのかが問題である。


とはいえ、大学でもオフィススペース、机、PCなどの機材は提供できるのだから、挑戦してみるテーマではある。


新聞社やテレビ局がネット報道へ転換するのが想定されるが、事業モデルが既存の新聞社やテレビ局とは違う、古い部門を持ってるところがそうなるのは容易でない。アメリカのネット新聞では一記事1600字というような原則(短い記事にする)ができつつあるようだが、こんな新しいやり方にもなれなくてはいけない。


そうなると、予想されるのがネット企業がネット事業や技術のノウハウを生かし、報道の事業に新たに進出することである。


ソフトバンク、楽天など、この間フォーブス誌の10億ドル以上の金持ちランクにのったグリーの創業者田中良和、まだ30才代の前半と若いので、ネットの調査報道へ乗り出す条件があると思う。


まず、一流のベテラン記者や編集者がマスコミの縮小にともないフリーランスになり、こうした人と契約するのが容易になる、こうした人は新しいジャーナリズムを創る気概があるので同志になれる。


また、ネット新聞はコストが安い、それはたくさんの人を雇う必要がない、配達がなくワンクリックで配信できるためだが、さらにグーグルがネット広告事業のビジネスモデルをつくったので、ネット新聞もネット広告を安定収入にできるなど、事業化には好条件が出てきた。


そんなわけでネット企業がマスコミの代わりになる、これはネット企業が社会起業に乗り出す話であるが、こんなことが起こりそうな感じがする。そうなると、福祉系統や教育に偏っていた社会起業の分野が広がって面白いことになりそうだ

しばらくブログを書くのをさぼってましたが、また始めます。1月13日のこのブログで「新聞社がNPO化」を書きましたが、その続きです。


インターネットが普及して、既存のマスメディア、テレビと新聞ですが、ピンチに立ってます。特に今度の不況で企業の広告費が減り経営が止めを刺されるぐらい悪化してます。


そうした現象は日本よりもアメリカで早く進行してますが、一昨日のNHKBS1の夜の番組では藤沢解説委員長がアメリカに出かけて現地調査した番組がありました。同じ問題は昨日のNHK総合テレビの放送記念日特集でも座談会で取り上げており、藤沢さんのアメリカ報告が流れてました。


藤沢さんの現地報告はなかなかよいできでした。


ここでボストン大学が40万ドルを出し、学内にNPOの事務所をつくり、マスメディアの縮小でフリーランスとなったベテラン記者や編集者が参加して調査報道をマスメディアから引き継いだ状況をやってました。


番組では2人のベテラン記者がボストン大学内レイプ、数百件が放置されてますが、これをなんとかしようとネット新聞で訴える事例が登場してました。


あきれた事態ですが、同じ問題は他の大学にもあり、数校がボストン大学のNPOに同調し、NPOの活動は大きくなってきていることを伝えてました。


新しいマスメディアの登場です。


大学がフリーランスのベテラン記者を支援するのは、憲法修正第一条で「報道の自由」をうたっており、それを実現するために大学が登場してきてるのです。


これはジャーナリズムが社会起業化してくる好例です。日本では想像も出来ないことですが、日本でも起こりそうなことだと思いました。「報道の社会起業化」、これは日本の成長分野です。


藤沢報告では、ネット企業からのマスメディアへの進出も報告されており、これがアメリカではうまく行っているようです。


例えば、「AOLニュース」はベテラン記者、マスコミが縮小してるので記者や編集者を入れるのは容易です、これを数百人と契約し、自ら調査報道に乗り出した様子を伝えてます。AOLの責任者はAOLがマスメディアの主役になると豪語してました。


ワシントンDC.にあるPolitico、3年前に創業し政治ニュースに特化したネット新聞ですが、記者70人と編集者20人で報道の仕事をやってます。編集長はもとワシントン・ポストにいた編集者です。ここは「スクープ工場」といわれるほど社会の評価は高く、政治かも一目置くほどの存在になってきました。


シアトルの地元紙はネット新聞に転換し、従業員を150人から20人へスリムにしましたが、読者は20万人から400万人に拡大し、うまく転換に成功しました。


これは社会起業ではありませんが、社会起業の近いところではこんなことも起こり始めたるのです。

デイビッド・J・ブルナーが唱えてる概念、短期業績を極大化し、株主への配当を第一主義にする株主資本主義に対する概念である。


David J. Brunnerは、スタンフォード大学コンピュータ科学科卒業、シリコンバレーでIT関連の企業を設立、東京のITのベンチャー企業に勤務の経験があり、日本語と日本文化研修生として静岡大学人文学部に留学、02年~04年にボストン・コンサルティング・グループ(東京、サンフランシスコ)に勤務、ハーバードビジネススクール卒業の経歴がある。


この間、ブルナーさんがNHKラジオに出ており、こういう考え方が好きなプロデューサーがいるんだと思った。


社会起業が多くなった資本主義かと思って聞いたが、そうでなく、従業員、仕入先、販売先、株主など、関係者が得になるような資本主義のことだった。


それなら昔からそういう考え方はあった。ブルナーさんのような若いアメリカ人がそうなっているのが面白く、市場主義一辺倒の資本主義も変り始めてることを思わせる

インターネットの普及により新聞社の経営基盤がゆらいでいるが、規模を縮小してNPO化して生き残るという話がアメリカで出てきている。


これに関し、ワシントン・ポストのレナード・ダウニー副社長のインタビューが毎日新聞1月11日号にある。


ダウニー氏とコロンビア大学ジャーナリズム大学院の教授がジャーナリズム危機の実態を調べ、地方新聞でリストラにあった記者は、取材拠点をNPOや大学に移し、ここに参加する人が増えていることをみつけた。


そこで、コロンビア・ジャーナリズム09年11・12月号に新聞社生き残りの提言を発表し、
・連邦議会と国税庁は取材記者の任意団体を非営利組織として認可すること
・慈善家と各種基金はここを支援する
・大学を調査報道の地域拠点にする
・こうしたNPOへの公的資金を増やす
などという。


インターネットの普及で読者が減り、今度の不況で広告費が激減し、経営基盤の弱い地方の新聞社は消滅する実感にあるようだ。そこで生き残り策としてダウニー氏の提言が出てきた。


これに対し、
・NPOの全米公共ラジオは今度の不況で寄付金が減りリストラをやっている。不況期には寄付金は減る。
・公的資金は報道を曲げる。
・繁栄した過去を取り戻そうとしてるだけ。
というような反論がある。


事情は日本でも同じである。昨日のNHK総合TV夜7:30の番組でこれを取り上げ、コメンテーターとして出ていた立花隆さんは、新聞社の生き残り策は定かでないが、NPOになって寄付金を新聞社の財源にするのは一つの選択肢だろうとNPO化を評価していた。


アメリカではNPOの社会におけるステータスは高くこんな議論が起こるが、日本ではこういう発想はない。座して何もしないと消滅の危機があるので、NPO化に挑戦してみたらいいのにと思う。

新年に立ち今年を展望したとき、何人かのジャーナリストは日本経済長期不況説を唱えていた。


例えば、19世紀後半にあった20数年間のイギリスの長期不況にそっくりだという。毎年の成長率が1%にみたない年が20年以上も続いたが、日本も90年代半ばから今日まで15年間GDPがほとんど成長しない長期不況が続いており、似ているという。


イギリスで長期不況に陥ったのは19世紀前半に産業革命が起こり製造業が勃興して繁栄したが、後半になると製造業が他の国にも波及し、特にドイツとアメリカに負け始め、代わって観光、貿易、金融なのソフトな産業に転換したのだが、この過程で製造業は保護貿易を、観光や貿易などは自由貿易を唱え、両者が激しく争った時期だった。


経済が停滞したも、政治はビクトリア朝時代として大英帝国が世界の政治を牛耳ったときで、政治は超一流で、世界に冠たるイギリスはまだ存在していた。


中国の総生産額が今年日本を抜く、それに続きインドも日本を抜くような国になるだろう、それがはっきりとした、これも日本を暗い気持ちにしている。


民主党の経済政策や脱官僚政治、ムダの排除が期待したほどのことがなくダメ、経済回復が見込めないのも世論を暗くしている。97年の春から始まったブレア政権は3ヶ月で国民の信を得た、それに対し鳩山政権は国がよくなるという予感を国民に与えなかった、これでは暗くなる。


自民党もダメ、民主党もダメと八方塞がりなのが未来の展望を暗くしている。


しかし、暗いだけではない。今日は成人式、そこで若者に未来をどう思ってるのか聞いた調査があったが、日本経済の先は暗く見ているが、自分の未来についてはそんなことはなく、明るい未来を開拓すると解答していた。


もう国には頼らない、自分で未来をつくる、これが起業家精神だが、やっとこうなってきたのは頼もしい。マクロはダメだが、ミクロはいいというのには希望が持てる。

ルーム・ツゥ・リード(RtR)を創業したジョン・ウッドと勝間和代さんの対談がダイヤモンドのオンライン雑誌1月8日号に載ってます。『スペシャル対談 勝間和代 ×「社会企業家」ジョン・ウッド 、大きく行け! さもなければ家に帰れ』、そのサイトはここです


RtRはアジアで小学生女子の教育をやっている高名な社会起業です。昨年ジョン・ウッドは日本で1億2000万円もの寄付金を集めたそうです。事業の内容がよければ人々の心をつかみ、日本でもこんなにもカネを集めることができることを証明してます。NPOは大いに学ぶべきことです.。


勝間さんの質問にこんなことを言ってます。
・(女子教育へ特化してることを聞かれ)ひと言でいえば、女子教育以上に効率のよい「投資」はないからです。


・私がマイクロソフトで学んだことの一つは(RtRの前はマイクロソフトのマネジャー)、「大きく行け、さもなければ家に帰れ」という主義です。物事をちまちま考えたくないんです。(ここも大いに学ぶところです)


・学校を一ヵ所、孤児院を一ヵ所支援するのも大変よいことです。しかし、ビジネスパーソンとしては規模を考えなければならない。私は最初から教育支援を企業家の発想でとらえ、ビジネスモデルを練りました。


・私たちがやることは、たった一つしかありません。途上国における幼稚園から高校までの教育支援です。「いつになったらマイクロファイナンス(貧困層向けの小口金融)を始めるのか?」、永遠に始めません。「上下水道整備プロジェクト?」、やりません。


・これまでスタッフに言ってきたことは、きわめて少ない目標に集中し続けよう、そして絶対的に大きな規模に広げていこう、ということです。


・私たちの組織には冗談で「企業難民」と呼んでいるビジネス経験者がたくさんいます。ゴールドマン・サックスやユニリーバで働いていたんだけれど、自分たちの未来は社会貢献にあると判断した人たちです。


・したがって、事業計画を立て、予算を組み、野心的な目標を達成することは得意なのです。非常に業績を重視しており、上場企業と同じように四半期ベースで成果を報告しています。


・私は(国連が2000年につくった)ミレニアム開発目標自体は強力に支持しています。ただし、どこの国の政府も数十億ドルもの巨額援助を文字どおり政府から政府に移転させるだけで、これらの資金が実際に必要とする人びとに行き渡っていない。


・RtRにはビジネスモデルはあるけれど、資金が足りない。政府には資金はあるけれど、ビジネスモデルがない。この現実を調和させるシステム再構築が必要だと痛感しますね。


ジョン・ウッドのような考え方は日本で不足してます。起業家がたくさんいる社会じゃなかったからでしょう。それ故ジョン・ウッドは貴重な存在です。こうした社会の雰囲気を変えなくてはいけません

年末年始につくられた公設派遣村(国立オリンピック記念青少年総合センター)に入所した人のキャリアはどうなっていたのかを新聞の特集でやってました。


建設労働者と製造業の派遣労働者が解雇され、同じような職種で仕事を探してますが、それが見つからないで失業者になった人が多い。地方出身者で東京に出てくれば仕事があると思って出てきたのですが、それがなかった。


建設と製造業では仕事はもう見つからないでしょう。公共投資が減り、製造業は中国やインドに負けてしたってるのですから。


そこで再教育によってエンプロイヤビリティー(雇ってもらえる能力)を高めなくてはいけません。この再教育に国が資金を投資するのです。これが今やるべきことです。


地方出身者が多い点を考えると、農林業はいいターゲットですが、自給率を上げる、林業再生の国の政策がフォローしなくては雇用の受け皿にならないので、新しい政策が必要です。


国がグリーン革命に投資すると雇用はたくさん生まれます。例えば、ソーラーパネル設置工事人の育成、風力発電機のメインテナンス、これらはアメリカで起こってることで、テレビはアメリカで新規雇用が生まれ、地域が活性化されたことを映像にしてます。


スマートグリット(双方向の送電線)の工事人も有望です。


日本だって起こることです。ハローワークで仕事を探せといわれてもなかなか見つからない、それなら数ヶ月の再教育に国費を使い能力を開発したほうが近道です。


環境と健康を新成長産業にするといってるんですから、早く具体的な政策を打ち出し、パラレルに教育投資もやればいいのにと思います。

正月のテレビで政治討論を見てましたら、民主党の「環境」と「健康」を新成長産業にする戦略について、出席していた政治家、大学教授、会社社長ーなど10人ぐらいの人々がほとんど賛成していたのには驚きました。


否定的な意見をいっていたひとも、具体的な実現策がない、企業の役割が書いていない、民主党のマニフェストに書いてある電力固定価格買取制度をつぎの国会で法律にする決意がないなどで賛成しけねるというもので、アイディア自身には賛成でした。


かっては、家電と自動車、半導体、コンピューター、情報通信などが成長産業になっていたのと比べ、環境と健康を新成長産業にするには違和感があると思ってましたが、そうでなくあっさりと肯定し、そこが成長分野だと認識してるんだなと思いました。そんな時代になってしまってます。


そこで「環境」と「健康」が新産業になるために何が必要なのか、二つの点を指摘しておきます。


第一は環境税と福祉目的の消費税です。
新産業が起こるのに、増税、消費者の直接負担が増えることはこれまでありませんでした。ところが今度は違い、そこが新しい点です。


太陽光発電や風力発電などの余剰電力を電力会社が買い取る「固定価格買い取り制度」、これがあるから太陽光発電の投資を行いますが、高く買い取った分電力料金が上がり、電力の利用者が負担します。あるいは環境税で税を徴収し、電気自動車の普及などに使います。


健康でも医療保険や介護保険で国の支出を増やしたり、企業や被保険者の保険料負担が増えたりします。


こうした負担や増税が財源になって需要が増え成長します。


来年度予算で環境税が議論されましたが、ガソリン税の暫定税率をこれに当てれば実現します。実際には要検討事項になってしまいましたが、すでに財源があるので再来年度には実現するのではと思います。


消費税についても民主党は4年間は上げないといってますが、これでは健康分野を成長産業にすることはできません。方針を変え、成長産業に使うので上げると国民を説得する必要があります。やってみると国民は納得するのでは。


第二は新産業の社会性と倫理性です。
環境も健康も社会性の強い事業で、経営には社会性と倫理性が必要です。それには最低限法令を遵守する経営でなくてはいけません。


アメリカのビジネススクールで倫理を教えてることを知り変に思ったことがありますが、事業に社会性豊富なら経営に倫理が必要になり、ビジネススクールで教えても当然です。


食品産業では内部告発で食品偽装が摘発され企業は倒産に至りますが、こんな経営精神では新成長産業に挑戦するなんてできません。


この辺りもがらっと変ってしまうことを予想させます。社会性と倫理性豊富な経営学は実際にそういう経営を10年もやったあとにできるもので、現在のところまだ判然としませんが、社会起業などはその好例ではないかと思います。


こんなわけで、民主党の新成長産業戦略は日本経済にとって大きな挑戦になるのではないかと思うのです。