ついこの間、マイクロソフトのビル・ゲイツが、東芝と組んで、温暖化対策を目的とする数千億円規模の次世代原発プロジェクトに着手することが報道された。


開発途上国向けの小型原発で、100年も燃料注入がいらないタイプである。東芝を選んだのは既に試作型を開発してるからである。


このことについて、ダイヤモンド・オンライン(3月30日号)で真壁昭夫さん(信州大学教授)が「世界不況後のリーダーは国から個人へ?大富豪マネーが社会投資に流れ込む是非」を書いている。サイトはここ


こんな内容である。
『彼ら(富豪)にとって、多額の私財を投入する価値のある潮流が顕在化していることがある』
『彼らは、そうした分野に「新しい可能性」があることを嗅ぎ取っているのだ』
『私財を投入している限り、仮に事業で損失が発生しても、それが公的機関や一般の人々に及ぶことはない。こういったトレンドは、社会全体にとって大きなメリットだ』
『私財を投入する限り、その事業が成功すれば、主な出資者の事業に対する影響が大きくなることが避けられない』
『今のように社会全体が変わりつつあるときだからこそ、彼らのように独断専行の迅速さや、果断な意思決定が求められるとも言える。社会が変わるときは、「新しいチャンスのとき」なのである』」
『民間企業の「リスク・テイク能力」が低下し、政府の債務残高は急速に拡大した。いくつかの国は、債務残高の大きさに潰されるかもしれない状況に追い込まれている。国といっても、もう「ない袖はふれない」状況になっている』
『新しい次の産業の芽を育てる必要は、むしろ高まっている。公的部門の機能低下と、新事業育成の要請を結びつける1つの選択肢が、成功者の私財投入による事業拡大のチャレンジと言える』
『そうした動きが盛んになればなるほど、政府のような公的部門の機能の必要性が低下する。それは、とても歓迎されるべき現象なのだが、一方で、大きなリスクも孕んでいる』
『問題は、個人と社会の利益を調整する仕組みや機能を確立することだ。1つの選択肢は、公的部門の規制によって、個人の利益が優先され過ぎることを監視することだろう。金融機関に対する規制の議論は、その1つの表れと考えられる』


真壁昭夫さんはDKBのシンクタンクにいた高名なエコノミストだった人で、大学では金融論を教えてるらしい。


ビル・ゲイツの社会事業への投資を高く評価してるのだが、ロンドン大学の大学院を出ているので民間が社会事業へ投資することの大切さをよく理解してるのだ。


こんなわけで、ゲイツと東芝の共同事業を論評できるだけの知識と感性があるのでこういう記事が書ける。


過去は国家や大企業がやっていた役割を、これからは大富豪がやるという視点は新鮮でなかなかよい。


こういう着想は日本に大富豪がいないので湧いてこないが、世界の新しいトレンドはそうなのである