不況期には企業の社会貢献活動は縮小する。反対に、景気が回復するときは寄付金は驚くほど集まる。+と-で長期間ならせば寄付金の額は減るわけでないが、救済を必要としている人は不況期に多くなるので、目前の状態をなんとかしたいわけである。


これがこれまでの経験則だった。しかし、不況期でも社会貢献をやる企業がたくさんあること伝えている記事がある。ダイヤモンドのデジタル誌12月8日号に竹井善昭さん(ソーシャル・ビジネス・プランナー)が「不況だからこそ社会貢献」という記事を書いているが、そのサイトはここ

中間支援団体NPOチャリティ・プラットフォームは12月1日から、「SayLove」というチャリティ・キャンペーンを開始した。昨年から始めており今年は2回目、今年のテーマは、子ども支援、「子どもの笑顔100万個プロジェクト」と称し、寄付集めを行なっている。そのサイトはここ

支援対象は病児保育の「フローレンス」、18才以下の子どもを対象とした電話相談の「チャイルドライン支援センター」、高校生対象にキャリア教育プログラムを実施する「カタリバ」、紛争や自然災害の被害者に対する緊急人道支援を行なう「ピースウィンズ・ジャパン」の4つ。


注目すべきは寄付集めに参加した企業数は昨年の6社から、今年は33社に激増しており、この連合型チャリティキャンペーンに参加を決めた理由は単なるCSRではなく、本業との関係性、企業理念の具現化という理由で参加している企業が多ことである。


2回目なので昨年よりも周知されたために参加した、不況の影響を受けずに増収増益の企業もあるなど、増加した理由はいろいろあるが、前期の記事で竹井さんは、本業と一体になった社会貢献活動をやっている企業が増えており、これが参加が増えた理由だろうと推測している。


一昔、環境投資をやったり、環境に支出する企業は少なかったが今では当たり前のことになった。これと同じように、本業の延長にある社会貢献、これなら不況期には社会貢献が縮小する、でなく、本業と一体となった社会貢献という新種が出てきてることが重要なことなのである。


例えば、Soup Stock Tokyoは昨年に引き続きの参加で、店内に募金箱を設置すると同時に、季節のスープセットの売上げの一部を「SayLove」キャンペーンに寄付をする。同社によれば、これはCSRの一環というよりも、「『食』を通して人々の生活を豊かにする」というSoup Stock Tokyoの企業としての命題を果たすためだという。


スープを通して顧客に届けたいのは「おいしさ」はもちろんのこと、「ほっとすること」だったり、豊かな気持や落ち着く時間など、さまざまな生活時間のベネフィットだという。暖かくておいしい食事は人を幸せな気持ちにする。チャリティもまた、人を幸せな気持ちにする。Soup Stock Tokyoが売っているものが「幸せな気持ち」「幸せになれる時間」だと考えれば、スープで幸せ、チャリティでも幸せというわけで、幸せな気持ちも倍増し、Soup Stock Tokyoで食事をする時間の価値も上がる。


本業と一体の社会貢献とはこんなことである。この境地では不況とCSRはまったく関係ない、不況だろうが好景気だろうが、CSRは自社の成長戦略の一環として捉えられ、実践される。むしろ、不況下においてこそ、その真価が発揮されるチャリティ・キャンペーンは、世の中を変えられるかもしれないという、夢やワクワク感を生活者に提供することができ、どんなに世の中が不況でも、夢やワクワク感に人はお金を払う。


SayLoveのサイトには参加した33社が出てくるが、高名なブランド企業はない。私は企業のことをかなり知ってるつもりであるが、それでも知らないところが多い。


本業と社会貢献の一体化、統合なんかトヨタ、ソニー、キャノンなんかはやらないこと。こうした企業とはちがい、見たこともないような企業理念が斬新で新しい企業が登場した。


あと5年もすればそんな企業が当たり前のことになるのかどうか、当たり前で自然なことになっている感じがします。