今、社会には仕事がない。「教育投資をやれ、職業教育をやれ、再教育だ」と、経済学者、評論家、ジャーナリストは異口同音に言っているが、さて、具体的にどんな教育なのか、これがない。


実は、それに確たるものがないので、発言できない。これから伸びる職業はまだ世の中に存在せず見えないからである。


健康・医療・福祉、グリーン産業あたりがその場所であり、介護士、薬剤師、風力や太陽光のグリーン電力装置の製造とその設置工事、そのメインテナンスなどが浮かぶ。もうゲームソフト、アニメ、コンピュータ。。。ではないだろう。


そう思っていたところ、昨日、「卒業生が100%就職する学校」とテレビ番組にあったので見た。モード学園のことで、谷学長(創業者)が一代記を語ってたが、未来の職業をいち早く発見し教育してるのでなく、期待はずれだった。


モード学園は昨秋、新宿駅近くに斬新な卵形の高層校舎を建てて話題になったが(谷学長は借金でなく自己資金で建てたのであんな斬新なものが出来たと語っていたが、15,000人の生徒から一人年100数十万円もとり、年200億円近い授業料があるので出来る)、テレビが取り上げたのは、この就職難の時代に100%就職するなんて珍しいからだ。


モード学園は1966年に名古屋でファッション・デザイナー教育で始まった。この頃は既製服が欧米を真似た「安かろう、悪かろう」だったので、これを変えるために自分で考えるデザイナーの養成を始めた。


谷学長のお母さんが洋裁学校をやっていたので、大学卒業後そこを手伝ったが、そんな縁でデザイナー養成学校を思いついたのだが、友人などの周りの人の98%は事業が成功するとは思っておらず、賛成したのは母親と弟だけだった。


みんな成功しないと思っていたので、これならライバルの参入がないと思って始めたが、時代の変化にぴったりで挑戦は成功した。


以後、コンビュータ時代が到来する直前の84年にコンビュータ技術者の養成に乗り出し、2000年には看護士の教育(看護婦の学校でなく男の看護士や救命士づくり)に乗り出し、これが現在3本柱になっている。


モード学園は、時代の流れとしては必要だが、まだなかった職業人を誰よりも早く養成したので、社会が待ってましたとばかりに受け入れて、成長してきた。


ただ、現在就職率が100%なのは、「ファッション・デザイナー、コンピュータ技術者、看護士」は、今では時代が待っている職業人ではなく、なみの職業なので、これまでのような先見性ではなく、就職率が100%なのは、過去のブランド(即戦力ですぐ役立つと評判)のせいや、就社(ブランド企業)でなく、就職(自分に合った仕事)に徹して就職先を選ぶような丁寧な就職指導が行われているからである。


画面に現れた学生と就職指導部の会話を見ると、高望みをせず、身の丈にあった仕事を選ぶなら、今でも職はあることを思わせる。


この番組を見ていて、66年のファッション、84年のコンピュータ、2000年の看護士は、現在は何なんだろう、まだないが、社会が必要としている仕事は何なんだろうと考えた。


こういう問題は、成長産業は何か、そこにはどんな職業が予想されているのか、を考えることである。大雑把に言うと、初めのほうに書いた分野であるが、社会性の強い職業、高い倫理観が必要なの職業、社会起業が新しい職業を生むのではないかと思う。


社会起業をこういう観点から見ると、社会起業は今の時代、価値あるものだとわかる