昨日、長妻厚生労働相が菅国家戦略担当大臣、直嶋経済産業相と会い、緊急雇用対策を話し合い、長期対策として社会保障分野、例えば介護には人手不足があるので、での雇用を増やす計画を年度内につくることで合意しました。


労働と医療・福祉の両方とも長妻さんの担当ですので不思議ないのですが、私はこの話を聞いたとき、「厚労相が成長産業戦略をつくるんだ、そんな時代になってるんだ」と思いました。


アメリカの経済学者クルーグマンは今春、アメリカの戦略産業は医療・福祉だといいました。もう金融、IT、ネットではない、これからは医療や福祉だと言うのです。公共サービスだったものを官民で新しく作り変える斬新な見方です。


またオバマ大統領は自然エネルギーを使うグリーン産業が戦略産業だといい、これも間違いではないのですが、いづれも過去の戦略産業と姿が違うのが共通してます。


自民党は今年の3月に成長産業戦略を経済産業省が中心となりつくりました。要点はこうですが古い臭いがし、ぼけて聞こえます。


・最大60兆円の需要創出、最大200万人の雇用創出を目標に3分野へ重点投資


・低炭素革命
低公害車へ補助金を出したり、省エネ家電への補助(すでに実施済み)、公立小中高校の約3万7000校に3年間で太陽光発電を完備(ここへの投資は民主党政権で児童手当や教育費無料化にばけてしまいました)


・健康長寿
駅のバリアフリー化、新生児集中治療室、救命救急センターの拡充


・底力発揮
コンテンツ産業の輸出額を現在の10倍の2.5兆円に、海外からの観光客の利便性向上


自民党は、この成長戦略に、高速道路や新幹線の着工前倒しなど従来型の公共工事などを加えた追加経済対策を考えてましたが旧来の考え方です。


私は医療・福祉もグリーン産業も、社会起業だと認識を新たにして参入しないとうまくいかないと思ってますが、この辺りでもこれからの成長企業の姿が過去とは変ってきます。


社会起業になる理由は、公共サービスだったり公益サービスだったりしたものが、税収がない、問題解決の知恵がない、スピードがないなど、産業の置き場所を公共経済から市場経済に置き変え、民間の資金や知恵を使い、市場経済の速いスピードに乗って進めるからです。この場合、これまでよりも経営者の倫理が一層必要になりますが、そうした感覚は事業をやって行けば自然に身に付いてくるものです。そうならなければ、うまく行かないんですから。


また経済産業相が成長産業ビジョンをつくらず厚労相がつくるのも、日本もそんな時代になってるんだと思います。長妻さんは、雇用の場をつくってるので、成長産業戦略をつくってるんだという感覚は希薄なんだろうと思いますが、長期の視点で雇用をつくることを考えるのは成長産業戦略を考えることなのです。


2000年ごろイギリスでは文化省の閣外相が委員長になり、クリエイティブ産業をイギリスの主力産業にする産業ビジョンを策定する委員会をつくりました。イギリスが21世紀にはEUで知識産業では先端をはしり、そこでリーダーになるんだという思いがありました。


想定した産業は、コンピューターソフト、映像、マスコミ、デザイン(ファッション、工業製品、建築、経営。。。)どれもソフトな産業なので、テレビ・プロデューサーとして有名で、そのために文化担当大臣となった人が委員長となって成長産業ビジョンをつくったのです。


こんな例があるので長妻さんが成長産業戦略をつくるのは不思議なことではありません。ここに新政権の新しさがあります