ひところ、「非営利という水に、営利という油が浮かぶ」と非営利事業でも”当たる”と利益が出てくる話をしていたことがある。それは非営利の水の中で、営利という油が水面に自然に浮かんでくることをさしていたが、聞いたビジネスマンからその感じはわかるとずいぶん言われた。古い非営利法人の経営者にはこの感じはわからないが、ビジネスマンにはわかるのかと、かえって当方が驚いたことがある。


営利事業でも最初の数年は赤字が続き、その後うまいことゆくと黒字に変わるが、それに似た現象である。社会に必要なものを提供して受け入れられれば、営利でも非営利でも利益が出るのは共通している。社会に受け入れられた証拠が利益となって突然浮き上がるのである。


札幌で6月の第一週にやるyosakoiソーラン祭りは、10年で200万人がくる祭りになったが、これは非営利活動である。ところが、この祭りは全国の100以上の都市に広がり、踊りを覚えるビデオやCD需要が発生し、祭りグーズも売れるようになった。そこでネット販売会社をつくったが、それは大幅黒字、黒字の一部は祭り資金に還元している。


こういう例である。まだ少数だが、非営利事業の数が増え品質がよくなると増えてくる。非営利→営利の流れは、自然に利益を生むところをつくるので無理をしない点がよい。日本でこれから、非営利事業が増えてくるのは間違いない。そうなると、利益を生む事例が増えてくるが、非営利事業で利益が出たら分社したり、別の事業部にして営利と非営利を明確に分けるのがよい。この場合、営利会社は株主へ配当するのでなく、非営利事業へ再投資するような仕組みをつくることが必要。


さて、こうした現象を企業の方から見るとどうなるか。
企業内には、営利か非営利かわからない事業がある。こういうところはリストラでずいぶん処分されたが、あいまい領域はまだ残っている。私は銀行の調査部に長くいたが、そこはコストセンターで稼ぐ必要がなかった。しかし、不況で銀行が儲からなくなると、予算を削減するとか、調査部員のボーナスを減らすとか、営業の役に立つ調査をやれとか、ずいぶんプレッシャーを受け不愉快な思いをした。


こんな経験から、いっそのこと、非営利法人へ分社しちゃったらよかったのかもしれない。分社すれば自立心が生まれ、優秀なアナリスト集団やエコノミスト集団ができたりして、一人一人はプロとして名をなしただろう。今ならその受け皿は、NPO、新公益法人、LLC、LLPなどこれからたくさん出てくるので、合ったものを自由に選択し、独創的な組織を創造できる。


新事業開発というと、資本金をつんだ子会社だけ考えるが、これからは営利→非営利→営利の循環をつくることを、企業は考える時代になったのではないだろうか。