非営利法人の関係者は、寄付金優遇税制を待望しているが、ついにその時代がやってきて、これで日本の非営利法人活動は、英米なみになる期待がでてきた。関係者には嬉しいことで元気が出てくる。

 

政府税調は、公益法人への寄付金優遇税制を見直すことが4月23日の新聞にのっていた。どの新聞にものっているが、毎日の記事が一番詳しく、わかりやすい。この記者は長くこれを追っかけてきたのだろう、実力がみえる。

 

現在、財団と社団法人の公益法人は約2万6000、同窓会や互助会などの中間法人は1500、これを「非営利法人」に一本化し、登記だけで設立できるようにして(現在は所管官庁の認可)、独立した有識者委員会が「公益性」を認定する(中間法人では同窓会の会費のように公益性はなくても「共益性」があればよい。法人税が非課税)。06年度中に法律にして、07年度以降に実施予定。

 

これが公益法人改革で、公益性判断を官庁から独立させるのが画期的であるが、さらに政府税調は、公益法人制度改革に対応して、非営利の法人についての税制の見直しを進めており、6月までに論点を整理する。寄付金への課税(寄付した個人の所得税や企業の法人税軽減)では、「今の時代に即した形」(財務省幹部)にして、有識者委員会が「公益性がある」「共益性がある」と判断した非営利法人には、自動的に寄付金の優遇措置を適用する。

 

寄付金優遇税制は、現在2万6000の財団、社団法人のうち、所管官庁が「特定公益増進法人」と認定した900があるが、これが大幅に増える。公益法人改革の対象外のNPOは、2万1000のうち、寄付金優遇税制の対象はわずか30、税調はこれも議論し、国税庁長官による認定要件の緩和が焦点。

 

ある新聞は、900が2万ぐらいになるのではと書いているが、この数は、公益性認定がこれからなのでわからないが、新公益法人は、使い勝手がよいので、もっと多くなるはず。

 

さて、この問題の論点1は、新公益法人の使い勝手がよくなることである。私は、旧公益法人を経営しているが、その実感から新公益法人は使い勝手がよいものになるなと思っていたが、それに寄付金優遇が加わりもうしぶんない。現行公益法人は、新公益法人へ移行するのだが、その前にいろんな事情で解散するところがある。その数はどのくらいかわからないが、かなりのものになるのではと想像している。残った法人に加えて、新規に登記をして公益法人に加わるのもあるが、NPOの数が減り(NPOよりも優遇税制が受けやすいとかいろいろ)、この数が大変増えるのではないかと思う。○○協会のたぐいは、NPOよりもこちらの方が似合うからであるである。そうなると、寄付優遇法人の数は2万よりも増えて、もっと大きな数になるのではないか。

 

論点2は、公益性認定の問題である。これにはあいまいさ、恣意性をを感じるだろうが、やり方しだいで、そうでもない。というのは、英米の経験では公益性にも相場があり、こういう場合と文章で明確に決まっており、恣意性が入る余地は小さい。日本でもそれと大同小異のものになるはずで、その相場、公益性を明示したリストだが、にそって事業を設計すればよい。あとは何の社会問題を鋭く切り取っているのか、どう解決するかの事業提案が鋭いなど、事業の設計能力いかんで公益性認定が得られるのだと期待している。

 

論点3は、社会起業家の能力いかんにより、非営利法人の実力が決まる時代に入る点である。06年度、07年度には、この新公益法人、NPO、1円会社(これなら株主への配当は必要なく、イギリスのCIC=コミュニティ・インタレスト・カンパニーのような社会性の高い会社が可能)、LLCとLLPなど、事業の器は満載になる。あとは、選択してやるだけだ。制度が未済の時代には、できない理由を制度のせいにできたが、もうそうは行かない。非営利法人のパフォーマンスを評価する法人もでてくる。非営利法人に格差が出てくるなどのことは、現状では想像もできないことであるが、きっとそうなるはずで、こういう時代を歓迎したいと思う。