日本でも大企業が社会起業を支援するようになるといいと思うが、そこで大企業のCSRが現在どのくらい進化してきてるのかを調べてみた。


アサヒビールの池田弘一会長は、経団連社会貢献推進委員長、1%クラブの会長をやっているが、政策科学研究所が発行している雑誌「21世紀フォーラム」07年3月号の巻頭言で「CSRについて考える」を書いている。


アサヒビールはCSRでは先進企業であるが(そのために経団連の委員長をやっている)、これが経団連会社が考えているCSRの先端なんだろうと思う。


CSRは
「近江商人の三方よしの精神が代表するように、社会貢献の精神は日本の企業には長い年月を経て今の経営にも反映されている」
「企業価値を上げるのに不可欠なもの」
「経営活動そのもの」
「重要な経営インフラ」
とまず語られている。


経営戦略の中に組み込まれるべきことだという認識は、欧米の先進企業と比べてみても遜色ないもので、CSR理念のレベルは高い。


そこで具体的に企業価値を向上させるCSRは次ぎの三点が大切だという。
1、社会の声に耳を傾ける、
社会=社員、顧客、株主、投資家、取引先、地域社会

2、社会の課題を解決するイノベーションを起こす
発酵・蒸留技術を使い、バイオマス・エタノールプロジェクトを推進

3、身の丈に合った未来社会への投資
身の丈=収益内、企業内に蓄積した資産内、永続性のある支援


このため企業が蓄積してきた人材、技術、設備、ノウハウ、情報を組み合わせてCSRのデザインするが、このとき経営者のリーダーシップが最も重要である。


CSR活動で社会にイノベーションを起こすといっているのは、このブログでも取り上げたことがあるが昨年のハーバード・ビジネスレビューでベスト論文になったポーターとクラマーの「戦略と社会」で提唱しているのと同じで理念は世界レベルである。


問題は具体的に何をやって社会にイノベーションを起こすかである。それ知るためにアサヒビールのHPを見たが、そこに具体的な6つの活動報告が記述されていた。


6つの活動報告:
1、品質:安全性と品質を追求、お客様の満足と信頼を獲得
2、法令遵守:法令・倫理規範を遵守した活動で社会からの信頼を獲得
3、環境保全:環境負荷低減活動、水源・森林保全活動を通じて地域へ貢献
4、情報開示:迅速で公正・公平な情報開示を通じて、経営の透明性を高める
5,地域との共生:ボランティア・文化活動などを通じて、社会の生活文化創造に寄与
6、飲酒啓発:未成年者飲酒・飲酒運転・妊産婦飲酒の防止、適正飲酒の啓発活動


親の心子知らずで、高い理念に比べて実践は貧弱、これじゃソーシャル・イノベーションは起こらない、池田弘一会長の思いは遂げられない。


池田会長の理念が新しく、活動は前世代のままなのでこんなことになってしまっているのだと思う。


トップの理念が新世代のもの、実践が旧世代のまま、現在大企業のCSRは今こんなギャップの中にいるだと思った。


ギャップがあるのだから、それは埋まる。埋めるにはCSRの新しいデザインを行い実践する人材が刷新されなくてはいけない。新世代の理念を実働する部隊は社会の先端的な動きに敏感で、ソーシャル・イノベーションを起こす気概にあふれている人たちである。


これも起こりそうなことで、数年もすればCSR活動は全く姿を変えるはず、社会起業家にとっては仕事がやりやすなると願いたい。