スコール財団 は、イーベイの創業者ジェフ・スコールの個人財団(サンフランシスコ)で、社会起業家賞を授与し(対象は3年以上の事業歴がある起業家)、賞金は40~50万ドルと多額で、これで社会起業家はソーシャル・インパクトを広げるために組織開発を行ない、インパクトを拡大する。


スコールは、「社会起業家は、問題解決型の心を持った実践家で、世界のもっとも困難な問題に立ち向かうのを恐れない人」だと言う。

「起業家がビジネスの顔を変えるように、社会起業家は、社会変化のエージェントとして行動し、他人が見逃した機会をとらえ、(社会)システムを改革し、新しいアプローチを発明し、よい社会に変える持続性のある解決策を創造する」
「利益が動機の起業家とは違い、社会起業家の動機は、社会を変えることである。この違いにもかかわらず、社会起業家は、ビジネスのカウンターパートのように、イノベーションと変化オリエンテッドで、悩まされ続けている社会問題を、新しく、一層よい方法で解決する策を探す」


ジェフ・スコールは、トロント大学でエレクトロニクス工学を学んだあと、スタンフォード大学のMBA、ナイト・リッダー・ニュースのオンライン事業を経験したあと、P.M.オミディアと2人で、イーベイを95年に創業、98年にIPO、初日の株価は18ドルだったが、半年後200ドルに上昇して大金持ちになった。


イーベイは、IPOのときイーベイ財団をつくっているが、それとは別に、スコールは、99年に彼の個人財団スコール財団を設立し、イーベイの経営は、メグ・ウィットマンCEOに任せ、財団経営に専念している。スコールのこの転進は、シリコンバレーの他の長者に影響を与え、ビルゲーツが、夫婦でゲーツ財団をつくったのが2000年のことである。IT・ネット長者が社会起業へ転進する先駆者となった。


スコールは、シリコンバレーは、技術革新のリーダーだが、そこにある豊富な人材や資源を使い、社会変革のパイオニアになる機会を持っており、これこそわれわれの最大の貢献だ、という。アメリカの社会起業家の原産地が、シリコンバレーだという強烈な信念の持ち主である。(もう一つの震源地がボストン、ニューヨーク、ワイントンDC、だからスコールの自負は少し過剰)


このブログでクラマー(Kramer)の社会起業評価を紹介しているが、彼は、スコール財団のThinkerで、スコールの助成で評価の研究をしている。スコールは、実践家だけでなく、Thinkerをも大事にしているが、その理由は、Thinkerは、ベストプラクティスを探し、モデル化して、すばやく世界中で複製ができるような研究をやる価値を認めているからである。この助成財団の社会起業研究は、一流大学よりも高いレベルで、大学で学生に教えるのも財団の仕事である。カネがあり、現場(社会起業家のこと)を知ってるので、よい研究ができるのは道理である。


スコール財団は、社会変革の実践に結びついた新しいシンクタンクでもあるのだ。