市民活動が盛んな社会では出生率が上がる話。
前回書いた内閣府の市民活動調査報告書に、縦軸に出生率、横軸にボランティア活動行動者率をとり、47都道府県をプロットすると右上がりの正相関の固まりができる。同じ報告書には、縦軸に犯罪率と失業率を、横軸にボランティア活動行動者率との関係をみたグラフもあるが、これはどちらも右下がりの逆相関の関係になっている。いなかの地縁社会では、出生率が高く、犯罪率が低い現象をグラフにあらわしているのだと読んだ。


さて、出生率であるが、日経の4月26日にこんな記事 が出ていた。内閣府は25日、フランスとドイツの少子化対策に関する調査報告を発表した。仏では90年代半ばから30才以上の女性の出生率が上がっている。その理由は、手厚い育児手当があること、母親が働くのに多様な働き方があること、育児サービスが整っていることなどである。育児手当は、2人以上の子供を持つ世帯に、20才になるまで所得制限なしで支給し、このほか乳幼児手当、育児休業手当など複数の手当もある。さらに税制面では子供の数が多いほど有利な仕組みになっている。


事情はイギリスでも同じで、2000年頃からの出生率上昇が話題になっているが、理由はフランスと同じ。北欧では、大学までの教育費がただであるが、これも出生率上昇に役立っている。


出生率低下は日本の大問題だが、欧州では上昇の話が多い。OECDは、ついこの間日本の出生率は、政策により1,3から2,0まで上げることができるという報告書を出したが、欧州流にみるとこうなるのだろう。

家族手当を手厚くするのは国の役割、母親の勤務体制を多様にするのは企業の役割、育児サービスを整えるのは社会起業家が行う市民活動である。勤務体制の多様化につては、母親の事情によって勤務体制を組むやり方で、なるほどそういうやり方があったのかと感心する。企業がめんどうでもそこまでやるのは、社会責任を果たすためだけでなく、良質な労働力を確保するためで、ポスト産業資本主義の時代になり、女性労働力の価値が上がっているからだこそだ。


育児サービスのような出生率を高めるサービスの開発は、社会起業家の仕事である。NPOフローレンスを経営している駒崎弘樹さんは、病児保育を事業にして4月から事業を開始した。活躍記はこのblog にある。自治体は病児保育をやっていない、小児科医も同じだ。実需があるのにサービスがない。こんなに働く女性が多いというのにあきれたことだが、そこで駒崎さんが乗り出した。行政と企業だけの社会ではどうしようもないという好例である。駒崎さんは、事業を始めたばかりだが、顧客の反応はすごくよく、具体的な様子はBlogにあるので見てほしい。


私は、駒崎さんの事業を2年見続けてきたが、2005年に事業は爆発の予感がする。駒崎さんは、女性でも働き続けることができる社会がよい社会だと思いやってるのだが、君の事業のずっと先には出生率の上昇という偉大な目標があるんだよ、と励ましている。社会起業家が出生率の上昇に貢献できるのは病児保育だけでなく、いろいろとある。社会起業家が増えれば、出生率は上がり、大問題は解決する。